
10月21日の、首相指名選挙で高市早苗さんが第104代首相に選出されました。
これまで日本では、総理大臣は歴代すべて男性で、女性政治家が大臣や党の要職に就くことは増えてきましたが、日本のトップとなるのは今回が初めてです。
政治の世界は依然として男性中心の文化が根強い場所でもありますから、今回、高市さんが首相に就任したことは、大きな意味を持ちます。
今回は、日本の政治における女性の活躍や、世界の女性の政治家について、お話ししたいと思います。

高市さんは、いわゆる「三バン」を持たないところからのスタートでした。政治家の世界ではよく「地盤・看板・カバン」と言って、地盤は地元の支持基盤、看板は知名度、カバンは資金力のことです。多くの政治家は、このいずれかを家族や後援会などから受け継いでいて、いわば「政治家一家」が多いわけです。
しかし高市さんは、奈良県の一般家庭に生まれ、自らの努力で道を切り開いてきました。もともと政治の世界に縁があったわけではなく、まさに”ゼロから積み上げた政治家”です。
1993年(平成5年)、第40回衆議院議員総選挙に奈良県から出馬されて初当選のときも無所属で当選されました。
この経歴そのものが、日本社会における女性のキャリア形成や多様な生き方の象徴になっていると感じます。
報道によると、「短大以外は学費を出さない」と親に言われ、学費の高い東京の私大進学を諦めて、国立の神戸大学へ通い、学費をご自身でアルバイトをして払っていたそうです。
▼参考
BBCニュース:高市早苗氏、自民党の新総裁に選出 日本初の女性首相となる見通し

日本で女性が政治に参加できるようになったのは、実はまだ80年ほど前のこと。明治時代から続いたさまざまな女性運動を経て、戦後1945年(昭和20年)、新しい日本国憲法の公布に先立ち、ついに女性の参政権が認められました。そして1946年4月10日には戦後初の衆議院議員総選挙が行われ、このとき約1,380万人の女性が初めて投票し、39名の女性国会議員が誕生しました。
1946年(昭和21年)11月3日に公布され翌年の1947年(昭和22年)5月3日に発布された新しい日本国憲法では、敗戦後の社会改革の一環として、憲法のもとに「男女平等」が明記されました。それまでの日本社会では、「女性は家庭にいるもの」「政治は男性が行うもの」という価値観が一般的でした。しかし、戦後の民主化の流れの中で「国民一人ひとりが政治を担う」という考え方が定着してきました。
当時の女性議員たちは、教育や福祉、母子保護など、社会的な課題を積極的に取り上げました。まだ社会保障制度も整っていない時代に、女性の視点で生活者の声を政治に届けたそうです。ただ、その一方で、女性議員の数はその後なかなか増えず、戦後しばらくの間は、政治は依然として「男性中心の世界」のままでした。

引用:衆議院公式サイト
2024年時点の統計では、日本の国会議員に占める女性の割合は約10%。OECD加盟国の中でも最下位クラスで、韓国やインドネシアなどアジア諸国よりも低い水準です。それに対して北欧では、女性議員の割合が4〜5割に達している国も多く、特にフィンランドやスウェーデンでは「男女同数の議席を目指す」という制度的な仕組みが導入されています。
日本でも2018年に、政党が選挙の候補者を決める際、男女の数をできるだけ均等にするよう努めるという「候補者男女均等法」が成立したのですが、それも「努力義務」にとどまっているため、実際の数値にはなかなか反映されていません。
それでも、都道府県議会や市町村議会では、女性議員の割合が20%を超える地域も出てきています。特に東京都議会は女性の割合が30%以上と、全国でももっとも女性の割合が多いことがわかります。
▼参考
PWC:政治分野における女性のさらなる活躍に向けて~日本の社会がより強く、優しく、しなやかであるように~

引用:O-dan
海外に目を向けると、女性が国家のリーダーとして活躍してきた例は多くあります。世界で最初に女性として首相に就任したのは、スリランカのシリマヴォ・バンダラナイケ氏で、1960年のことでした。続いて、インドのインディラ・ガンディー氏、そしてイスラエルのゴルダ・メイア氏と、アジアや中東の国々では早くから女性が国を率いてきました。
ヨーロッパでは、マーガレット・サッチャー氏や、ドイツのメルケル元首相など、女性リーダーが活躍しています。しかし、実はアメリカはまだ女性大統領が誕生していないのです。
特に、イギリスのサッチャー氏は”鉄の女”と呼ばれ、強い経済改革を断行したことで有名です。実は高市さんも、サッチャー氏を尊敬する人物として挙げていて、自身の政治目標の一つとして「日本の鉄の女になること」と語ってこられました。信念を貫くリーダー像に重ねるように、強さと責任をもって政治に臨まれているのだと思います。
そして他にも、ドイツのアンゲラ・メルケル元首相は、16年間にわたって安定した政権を維持し、ヨーロッパの要として信頼を集めましたし、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相は、コロナ禍での迅速な対応や、共感を重視した政治姿勢で国内外から高く評価されました。
一方アメリカは、先進国として男女平等やダイバーシティが進んでいるイメージですが、実は政治面では「ガラスの天井」と呼ばれていて、女性が権力を持つことをよく思わない層も一定数います。
ただし,州知事レベルでは,今年2025年11月4日に行われたニュージャージー州とバージニア州の知事選挙では女性が州知事に選ばれて,流れも変わってきているように感じます。
▼参考
ESGインテグレーション研究教育センター:世界の女性首脳はどのように報道されているのか
BBCニュース:【解説】日本初の女性首相、高市早苗氏はどんな人か 「鉄の女」サッチャー元英首相を私淑
CNN:米民主党が知事選などで勝利、有権者はトランプ氏を拒否 選挙結果から見えたポイントは
高市さんが首相として日本を引っ張っていくリーダーになってくれたことに、大きな期待を感じています。バブル崩壊後30年近く続くこの閉塞感は、何も変わらないだろうという国民の絶望感もあると思います。
女性の社会進出についても、政策は整えられても現状は大きく変わってこなかった面もあるとすれば、今回の女性首相の誕生は明るいニュースであり、社会が良い方向に変わっていくことを望みます。
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