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寿都町が核廃棄物の最終処分場選定の文献調査へ応募決定

『コトニ弁護士カフェ』2020年10月16日放送分

寿都町が核燃料廃棄物の最終処分地選定のための「文献調査」に応募を検討していることは8月に紹介しましたが,10月9日に寿都町と神恵内村が文献調査の応募を正式に表明しました。
文献調査への応募までの状況と,長友弁護士が見た寿都町の様子,そして寿都町が今後求められる対応について解説いたします。

応募についての反応

寿都町の片岡町長は正式に文献調査への応募を表明し,10月9日にNUMOで応募手続きを行なった後に梶山経済産業相と会談したことが報じられました。
同じく10月9日に,北海道の神恵内村も応募を正式に表明しています。

寿都町と神恵内村は同じ日に応募を表明したのですが,新聞やテレビでの報道をみるとそれぞれの住民の反応がとても違うように感じられます。
寿都町では,応募を検討していることが8月にニュースで報じられる前には町長や町から事前に全く説明がありませんでした。
突然知った住民の驚きはとても大きく,反対の声がより強くなってしまったように思われます。
もしも少しでも事前の説明があったら,住民の反応も違っていたのかもしれません。

一方,神恵内村は地元の商工会が村議会に提案する形でスタートしました。
商工会から村議会に請願を提出した後に村議会が委員会で検討して,NUMOに住民説明会を要請した形式をとっています。
文献調査の応募の発端が商工会とはいえ住民からの発信で始まっているので,住民の反応も寿都町とは違っているのかもしれません。
神恵内村は寿都町が文献調査に応募すると話題になったのを知って,もしかして慌てて準備をしたようにも思われます。

自分の意見を恐れずに言える社会へ

先日,寿都町の片岡町長の家に不審物が投げ入れた事件が起きました。容疑者はすぐに逮捕されましたが,このようなことは決して許されないことです。

日本は民主主義国家ですから「私はこれがいい」「私は反対」と大いに自分の意見を主張するべきです。
しかし,暴力で訴えたり,その議論とはまったく関係ないことを持ち出してきて相手を貶めようとしたりするなど,自分の意見を強引に押し通そうとすることは間違った行為です。
このような事件が起こると,怖くなったり萎縮したりして意見を言い出しにくくなってしまいます。
表現の自由は日本の民主主義を支えるものですから,自分の意見が正しいと思うのならばきちんと主張と根拠を持って対話すべきです。

寿都町を訪れて感じたこと

8月以降,私はたびたび寿都町を訪れています。
最近の訪問は,町長が文献調査の応募を表明した翌日でした。
何か発表が行われるような日を避けて訪問するようにしているので,報道陣の取材活動を見ることもなく,外見上は普段通りの静かな寿都町に感じられました。

しかし,寿都町の友人や知人によると町全体が反対も賛成もはっきり言いにくい雰囲気で,いつも周りの目を気にしないといけなくなってしまったという声を聞きました。
この人は反対派だ,賛成派だというような話が広がっていたり,あの人があの人と会って話をしていたなどのような話も聞かれたりしているようです。
もともと寿都町は人の噂が簡単に広がってしまうような小さな町。
誰もが疑心暗鬼になっている現在の状況はとても残念に感じます。
周囲の目や評判を気にするあまりに,本当の自分の意見を言えなくなってしまうような無言の圧力を感じる心配もあります。

10月初めに訪問した際には、道の駅で水産物の販売などのイベントが行われて,多くの人たちで賑わっていました。
若い方たちは今回の件について,自分たちの未来に直接繋がることだと切実に感じていて,町や地域についてこれまで以上に真剣に考えるようになったとの意見もありました。

今後もより丁寧な説明が必要

文献調査への応募の検討を表明した8月以降に,寿都町では町民向けの説明会が数回開催されました。
参加した住民の話によると,町長は「応募したい」「応募したら町にお金が入る」と言うような主張が多かったそうです。

  • そのお金を何のために使うのか
  • 住民にどのようなメリットがあるのか
  • 本当に最終処分場を誘致することになるのか

このように,住民が本当に知りたいことについては,しっかりとした説明が無かったとのことでした。
また,説明会の開催と並行して,住民やさまざまな近隣市町村の団体が反対活動を始めたり,集会を開いたりもしています。

まずは文献調査の応募への初動がよかったとは言えず,その後の説明会でも住民が納得するような説明ができていないように思われます。
そのため住民の間には,目に見えない溝ができたように感じられます。
もしも町長や町が文献調査の応募についてもっと順序を踏んで丁寧に説明できていたら,町民の間にも理解が広がって,応募する・しないのどちらの結果になったとしても,今のような溝はできなかったのではないでしょうか。

文献調査の期間は2年間程度ですが,始まる時期はまだ明らかになっていません。
文献調査によって付与される交付金をどのような用途で活用するのか,町長または行政は住民に分かりやすく説明していく必要があると考えます。
「町にとってこのような発展が望まれる」というような具体的な将来像を,誰もが理解できるようなかたちで見せていくことが求められると思います。

『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2020年10月30日放送です!

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毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
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