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退職代行サービスとは?需要が高まる背景と法的問題

『コトニ弁護士カフェ』2024年5月24日放送分

近年,退職代行というサービスの需要が高まっているようです。
2024年4月時点でも多くの方が退職代行を利用して,春に就職したばかりの会社を退職する新入社員が相次いだことで話題になっていました。
今回は,退職代行とはどのようなサービスなのか,また需要が高まっている背景と法的問題についてお話しします。

退職の意思を代わりに伝える「退職代行サービス」

退職代行サービスとは,その名の通り「退職の意思を代わりに会社へ伝えるサービス」です。
退職代行業者が,退職希望者と会社とのやりとりの仲介役を担ってくれます。
ブラック企業などの過酷な労働条件で辞めたいと言えない状態であったり、上司との関係が悪くて言い出しづらい,場合によってはパワハラなどの被害があって言えるような雰囲気ではないなど,職場での人間関係に問題があったりする場合に利用されています。

一般的に会社を退職する場合、「退職を希望する日の1ヶ月以上前までに辞表届を提出するなど,就業規則で定められているケースもあります。
その一方で,「本人」が「直接」辞表届を提出するなどの規定は明記されていない場合がほとんどだと思います。
たとえ明確に定められていなくても,退職希望者自身が直接上司に退職の意思を伝えるのが一般的だと考える方が多いでしょう。

しかし,本人が直接辞表届を提出しなければならないと法律上も規則上も定められていない以上,代理人により辞表届を提出することは必ずしも違法又は効力が無いとは言えないということです。
退職代行サービスはこのことを根拠に行われているビジネスということができます。

退職代行サービスは,2018年9月から12月にかけて,さまざまなテレビ番組で一気に露出されて話題となり、より広く認知され始めたのは2019年頃だといわれています。

最近は,退職の意思を示した従業員に対して,会社側が必要以上の引き留めをおこなう「慰留ハラスメント」が社会問題になっていますが,そういったケースであれば,退職代行サービスを利用するのは有効な手段かもしれません。

退職代行サービスを利用する際の注意点

退職代行サービスが対応できる範囲は,労働者の退職の意思を伝えたり,書類の受け渡しを代行したりすることだけです。
退職代行サービスが労働者に代わって交渉したり,退職手続きに関わる書類に記入したりすることはできないことになっています。

そのため,退職代行サービスを利用したからといって,手続や交渉のすべてをお願いできるわけではありません。

もしかしたら,退職代行サービスを通して退職の希望を伝えてもらったところ,会社から「退職は認めない」と言われる場合があるかもしれませんが、退職代行サービスができるのは,あくまで「退職の意向を伝える」までであり,退職希望者と会社の間に入ってそれ以上の条件を交渉することはできないのです。

退職する際のトラブルについて

民法の定めによると、そもそも会社というのは,労働者が退職を申し出たらそれを拒否することはできません。
原則として,退職希望日が2週間以上先であれば,解約の通知から労働契約は2週間で終了しますので法律上は退職できることになっています。

民法第627条 第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する

ただし、「雇用の期間を定めなかったとき」とありますので,契約書に雇用期間が定められている契約社員などの場合は,契約期間の途中で解約することになるため,原則として契約書に即した退職条件となります。

退職の通知時期や退職時期のトラブルの他に,退職時に有給休暇の取得を認めてもらえず,欠勤扱いのまま退職させられるケースも少なくありません。

有給休暇の取得は,労働基準法第39条で労働者の権利として定められており、従業員の有給休暇の取得を認めないのは原則として違法行為です。

上記のような「会社が退職を認めない」「有給消化を認めない」といった場合、たとえそれが違法行為だとしても、退職代行サービスは説得や交渉を代行することはできません。
法的な問題に発展する可能性もある場合は,法律の専門家である弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。

退職代行サービスが非弁行為にあたる可能性も?

もともと退職の代行は,退職に関するトラブルの一環として弁護士が対応していた業務です。
最近では,会社に対して労働者の退職の意思を伝えることは弁護士資格がなくても可能であると考えられ,退職代行の専門業者が増えています。

しかし,一部では退職代行サービスは場合によっては弁護士法に抵触するのではないかという見解をしている専門家もいます。弁護士でない者が報酬を目的として法律事件に関する法律事務をおこなうことを非弁行為といいます。

弁護士法72条
弁護士又は弁護士法人でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件,非訟事件及び審査請求,異議申し立て,再審査請求等行政庁に対する不服申し立て事件その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを業とすることができない

上記のように,退職代行サービスは和解や仲裁などができず,あくまでも退職の意思を伝えるまでなので,会社側の対応によっては,結局退職代行サービスでは対応しきれない範囲になってくることも多いと思います。
契約書や法律と照らし合わせて会社側との交渉が必要になってくると,やはり弁護士に相談することになるでしょう。

退職代行サービスの中には,顧問弁護士が在籍しているところもあるので,費用は高くなりますが,法的サービスまでお願いしたいのであれば,そういったサービスを提供する事業者のほうが安心かもしれません。

退職代行サービスを利用するときは信用度を確認しましょう

退職代行サービスを提供している会社は今や多くあります。
退職代行を利用する際は,会社のホームページだけでなく,インターネットでの口コミや評価なども確認しておくといいでしょう。

低評価の口コミが多すぎる退職代行サービスや,口コミやホームページがまったく出てこない退職代行サービスは,信用できるかどうか慎重に判断することをおすすめします。
また,繰り返しになりますが,顧問弁護士が在籍している退職代行業者を選ぶ方が安心と思われます。

顧問弁護士が在籍している業者は,法律に則った対応をしてもらえると考えられるので、トラブルに巻き込まれるリスクを下げられ,退職が有利に進むケースもあります。
退職の意思を無視されたり,有給消化をさせてもらえなかったりした場合に,弁護士の対応が強みとなるでしょう。

退職を考える時点で,パワハラまがいのことがある,残業代の未払いがある,有給消化を断られているなど,すでに問題が明らかな場合は,退職代行サービスでは解決できない可能性もありますので,はじめから弁護士に相談した方がスムーズに解決できるかもしれません。

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